• 検索結果がありません。

分子研リポート1997 | 分子科学研究所

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "分子研リポート1997 | 分子科学研究所"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

5-4 教官の人事方針

5-4-1 任期制度検討小委員会報告

任期制度の導入に関して検討する委員会を3回開催し,合意に達した部分についてまとめる作業を行った。さらに2月16日開 催の第12回将来計画委員会において委員会の報告を行い承認を得た。以下では任期制度検討小委員会の議事録とまとめの文 書「任期制度について」を示す。

(1)第1回任期制度検討小委員会(H9.11.5)

出席者 井上克也,小杉信博,谷村吉隆,藤井正明,宮島清一,森田紀夫,藥師久彌     田中晃二(委員長)

    齋藤修二(オブザーバー)

個々の委員の意見に基づいて議論した。その結果を各所属系・施設に持ち帰って助手層を含めて全体の意見を次回にまとめ ることとした。

1) 全般

全員の一致した意見は「今の人事システムで問題はない。法律に則るにしても今の人事システムをそのためにわざわざ変形さ せる必要はない」というところであった。ただし,何らかのメリットがあるのなら積極的に法律に則る必要があるのではないかとい う少数意見が出た。また逆に,法律に則らずに今までどおりの人事システムを堅持することはできないのかという疑問も出された。

2) 助教授の任期

大半は「教授への昇格が禁止されている現状では任期を設ける必要はない」という意見だった。ただし,これまでの実績から判 断して妥当な範囲で任期を設定してもよいのではないかという少数意見があった。

3) 教授の任期

内部の助教授を採用するのではなく,すべて所外で充分な業績を挙げた人の中から厳正な人事選考を経て採用された人材 なので任期をつける必要はないという意見であった。

4) 施設助手の任期

所内外の研究者の支援業務を主とするポストなのでこれまでどおり任期なしでよいという意見で一致した。 5) 研究系助手

これまでの6年任期と同様,最初の任期は6年とするのがよいという意見にまとまった。しかし,再任の年数,再任の回数制限な ど簡単には決められなかった。そこでたたき台をつくってそれに対して所属系・施設に持ち帰り議論することとした。たたき台とし て再任3年で2回まで(最大12年)という案が出された。また,再任手続きは人事部会で採用時の選考委員会での審議に準じる形 で厳密に行うのが望ましいという意見が出された。

ただし,これまでの6年を越えた場合の主幹会議・教授会議での1年毎の任期延長説明は意義があるので,それに準じることは 続ける必要があるとの意見が出た。また,これまで学生・フェロー・技官など所内経験者は10年を最大とすること(例えば,6年の経 験がある者が助手に採用された場合には任期が4年に短縮)が内規として決まっていたが,これに準じる形で再任手続きとは独 立に10年を越える時点から(先の例では4年を越える時点から)1年毎に主幹会議・教授会議で延長説明を行なう必要があるので はないかという意見が出された。

(2)第2回任期制度検討小委員会(H9.12.15)

出席者 井上克也,小杉信博,米満賢治(谷村吉隆代理),藤井正明,宮島清一,森田紀夫,藥師久彌

(2)

    田中晃二(委員長)     齋藤修二(オブザーバー)     伊藤光男所長(途中退席)

前回の議論の結果を各所属系・施設に持ち帰って助手層を含めて全体の意見を聞いた結果を参考に,個々の委員の意見を 調整してまとめる作業を行った。

1) 助手の意見

12月8日に田中委員長のアレンジで助手に集まってもらって助手任期について意見を集約する会合を持ったので,その報告 があった。基本的には現行のやり方で不都合はないという意見であったが,法律に則った任期制を導入することに関して強い反 対意見は出なかった。任期6年という公募条件で採用されている現職助手から,任期制を導入した場合に所外の応募者に与え る印象を聞くことは,本来,無理であると判断される。また,理論系助手と実験系助手で任期に対する考え方が違うことが明らかに なった。理論系では研究室の設備に依存する要素が少ないので短めに任期をとらえる傾向があるのに対し,実験系では研究室 の設備に大きく依存し,研究環境の整備に任期の前半部を消化してしまうことが多く,長めに任期を考える傾向がある。

2) 全般

再度,確認した結果,全員の一致した意見は「今の人事システムで問題はない。法律に則るにしても今の人事システムをその ためにわざわざ変形させる必要はない」というところにあったが,導入するとしたら,今のシステムのメリットは殺さず,欠点だけを 解決する方向で検討すべきであるという意見が出され,現在のやり方の欠点について議論することにした。また,導入するにして も急がずに,ある程度,まわりの状況を見てからの方がよいのではないかという意見も出された。

3) 教授,助教授,施設助手の任期

現行通りでよいとする前回の議論の結果に対して大きく異なる意見は出なかった。 4) 研究系助手

これまで分子研で行われてきた助手への任期付き採用は流動性に大きく貢献し,分子研の活性化にも役に立ってきたが,改め て欠点を見直すとすると,ある場合には早めに任期を切って転出を促した方が本人のためになる場合があるのに,今のシステム では本人次第という要素が大きいということにあるのではないかということが議論になった。それを考えると,法律に則った任期制 を導入し,再任手続きを厳密にやっていくことがよいのではないか,また,再任の審議には採用時とは異なり所属教授・助教授が 加わらない方がよいのではないかという意見が出た。そういう観点からは任期制の導入に関して概ね賛成ではあるが,これまで のやり方のメリットをつぶさない限りという条件が必要とされるという付帯条件も出された。

これまで実行してきた6年任期を法律に則って改めて6年に設定することに関しては何ら異論がなかった。また,再任回数に制 限を付けなければならないとしても1回では無理があるとの意見になった。再任2回,最長12年を妥当とするのなら,6年任期,再任 3年が妥当な案となる。ただし,最長12年を限度とすることに関しては根拠が不明であるとの意見が出され,これまで在職した助 手の在職期間と在職年数,現職助手の採用年月を調査し,そのリストに基づいて最長在職年数の妥当性を検討することになっ た。

(付記) その後,所長と人事課の統一見解(文部省に確認済み)として再任の回数を制限する必要が無いことが知らされた。 その結果,最長12年の在職年限の必然性の根拠が不十分であることから,委員会では在職の最長年限を定めないこととした。

5) その他

これまで内部運用として2∼3年任期の助手の採用も実施してきたが,このような内部運用にまで法律を適用する必要があるの かどうか,議論になった。短期助手として勤めた後に,6年任期の助手として採用された場合に,短期助手として勤めた年数が6年 任期に全くカウントされないのであれば内部運用は問題ないのではないかという意見があり,人事課に確認することになった。

(3)

(付記) 確認の結果,6年任期の採用時に短期助手として勤めた年数は任期にカウントされないことがわかった。委員会では 短期助手などの運用上の問題は検討内容から切り離すことにした。

(3)第3回任期制度検討小委員会(H10.1.21)

出席者 井上克也,小杉信博,谷村吉隆,藤井正明,森田紀夫,藥師久彌     田中晃二(委員長)

2月16日の第12回将来計画委員会に向けて,本小委員会として提出するまとめの文書「任期制度について」を作成する作業 を行った。

1) まとめの文書の構成

まとめの文書の構成は以下のようにすることにした。

・これまでの人事政策の説明をまず行う。実績として流動性に大きく貢献し,法制化される前から先進的であったことを強調 する。

・分子研の教官の職種を法律に照らし合わせて位置づける。

・任期を設定する場合と任期を設定しない職種を規定する。具体的には研究系の助手への任期制の適用。

・これまで6年を越えた場合に主幹会議と教授会議で行ってきた研究系助手の1年毎の任期延長の手続きを強調する。

・再任手続きは3年毎に行うこととする。回数制限は設けない。 2) 従来の人事政策

人事政策と銘打って文書化したものがこれまで存在しないので,現人事部会長の岩田教授と前人事部会長の北川教授に意 見を伺って田中委員長がまとめたものをたたき台として検討した。これらは慣例的に行われてきたものであり,今後,変わりうるもの かも知れないが,これまでの実績の説明をしておくことは必須であるという理解に立ってまとめることにした。流動に貢献している という実績を示すデータが必要であるが,委員会としては,新たに作成することはせず,「分子研リポート’ 93」でまとめられた「教

官の在任期間一覧」を引用するだけで十分であると判断した。 3) 教官の職種

分子研の研究系教官はすべて法律でいうところの「先端的,学際的又は総合的な教育研究で多様な人材の確保が特に求め られる教育研究組織の職」に相当することが確かめられた。また,施設教官は業務があるため,任期制が適用できるいずれの職

種にも該当しないことが確認された。 4) 任期を設定する職

これまでの人事政策を守ることを原則とするが,研究系助手の任期6年は今後,法律に則って位置づけ直さなければならない。 他の職については,検討の結果,これまでの人事政策を変える必要はなく,任期を設定しないことが確かめられた。

5) 1年毎の任期延長の手続き

1年毎の任期延長の手続きこそ,分子研がこれまで行ってきた特徴ある政策であり,実績として効果的であった。主幹会議では その研究系全体に責任を持つ主幹が任期延長願いを行い,教授会議では助手が属している研究グループの教授・助教授が任 期延長願いを行うことは,教授・助教授側の責任を問うプロセスである。これは法制化で規定された再任手続きとは考え方が違 うものであり,今後もこのプロセスが形骸化しないために,ここで文章化しておくことが必須であるとの結論に達した。なお,任期延 長という概念は法律にないので,とりあえず「再任資格の承認」としてみたらどうかという案が出され,さらに人事課に問い合わせ るなりして表現を工夫することとした。

6) 再任手続き

(4)

法制化によって導入される再任手続きはこれまでのやり方の特徴を損なわないように注意深く行う必要がある。特に,3年毎に 再任が認められることで,3年は保証されると誤解されて,1年毎の任期延長手続きが形骸化してしまうことのないように気をつけ る必要がある。ただし,人事部会で行うことになる再任手続きは,助手本人の努力を所外委員を含めて直接問うという意義がある ので,再任手続きの導入は従来の1年毎の任期延長手続きの形骸化には結びつかないという意見が大勢を占めた。また,再任手 続きそのものは,再任の可否を決めるものであるが,「みだりに教員を解雇する手段として利用することがないようにする(文高企 第149号より)」ために,再任の否という結論は安易に出さないように注意しなければならないということが確認された。これまでの 実績あるやり方に照らし合わせると,再任手続きというものは否を出すところではなく「あと3年の内に転出努力を最大限しなさい」 という勧告をすることではないかという考えも出された。

(4)任期制度について

1. 分子科学研究所人事政策

分子科学研究所では創立以来,教官(教授,助教授,助手)の採用に関しては厳密に公募の方針を守り,しかもその審議は全 て所内5名,所外5名の委員で構成される運営協議員会人事選考部会に委ねられている。さらに,厳密な選考を経て採用された 助教授および助手は分子科学研究所教官の流動性を保つため所内昇格が禁止されている。施設の助教授・助手については例 外規定が設けられているが,実際には分野の特殊性から施設でただ一度,助手から助教授への昇格が認められた例があるだけ である。助手の6年任期もかなり厳しく守られている。研究系助手が6年を越えて勤務する際には毎年,本人の属する研究系の主 幹あるいは施設長が主幹・施設長会議においてそれまでの研究活動と転出の努力を報告し,同会議で承認された後,教授会議 でも同様の手続きを行い承認を得るという手続きをとっている。

教授と助教授の研究グループの研究活動に関しては,毎年教授・助教授全員が所長と研究顧問によるヒアリング,また3年お きには研究 系ごとに国内 委員と国 外委 員による点検・評価を受けている。さらに,教 授と助教 授の個人評 価は国外 委員により

confidential reportの形で所長に報告されている。このように完全な公募による教官の採用,国内外の外部研究者による評価なら びに内部昇格禁止等の内部措置により,分子科学研究所に勤務する助教授および助手は研究業績を上げて,大学や研究機関 に転出していくことを当然のこととしている。教官の流動性とは,全ての研究者が等しく,その能力に応じて研究環境が整った大 学や研究機関で研究する機会が与えられることであり,その結果,個々の研究者がさらに研究能力をのばして各研究分野で指 導者としての人材に成長することに大きな貢献をするものである。この観点から見ても,これまでの分子科学研究所の助手・助教 授の流動性の実績は「分子研リポート’ 93」にまとめられているように自負できるものであり,また,その多くの人が各研究分野で指 導者としての評価を確立させている。

2. 任期制度

教員の流動性と教育研究の活性化を目的として,平成9年8月に「大学の教員等の任期に関する法律」が公布された。この法 律に於いては教員の募集方法や採用・昇進基準ならびに業績評価の在り方について見直しを含めた一層の工夫・充実が求め られており,以下の(1)∼(3)の職種に関しては任期を定めて任用することが可能であると規定されている。

(1)先端的,学際的又は総合的な教育研究で多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき

(2)助手の職で自ら研究目標を定めて研究を行うことを,その職務の主たる内容とするものに就けるとき

(3)大学が定め又は参画する計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職に就けるとき

分子科学研究所における助教授および助手の高い流動性は,任期制のみならず完全な公募による教官の採用および内部昇 格の禁止等を含む独自の人事政策によるものである。したがって,教官の流動性に関しては,法制化された「任期制度」よりも現 行の分子科学研究所の人事政策の方が厳しい制度であると思われるが,今回,法律に従った形での任期制度の点からこれまで

(5)

の人事政策を位置付け直すこととした。 2−1  対象職種

分子科学研究所では教授・助手あるいは助教授・助手が個々の研究グループを構成し,各研究グループの自由な発想のもと で研究が行われており,その遂行のためには多様な人材の確保が最も重要である。したがって,今回法制化された任期制を対象 とする上記の(1)∼(3)の職種のうち(1)の職に該当するものを任期制度の対象者とする。

研究系助手:従来,分子科学研究所で行われてきた研究系助手への任期付き採用は流動性に大きく貢献し,研究の活性化に も大いに役立ってきた。したがって,従来通り,6年の「任期」を設定する。 

施設系助手:全国共同利用機関としての各種測定機器の保守・管理等のサービス業務を行っており,(1)∼(3)の範疇に該当 しないことから,任期制は設定しない。

助教授  :教授への内部昇格が禁止されていることから任期制は設定しない。

教授   :所外で充分な業績を挙げた人の中から選考されており,研究所の管理・運営に対して責任をとるべき地位である ことから任期制は設定しない。

2−2  6年次からの1年毎の手続き

研究系助手の任期「6年」の期間内での転出に対しては,本人のみならず所属研究グループの教授あるいは助教授も最大限 の努力を払うことが必要である。両者の努力にも関わらず6年以内に転出先が決まらない際には,3年毎の再任手続(次項)に先 立ち,6年次から毎年,以下の2段階の手続きを行うものとする。

(1)当該助手の属する研究系の主幹は毎年,主幹・施設長会議に於いて,当人の研究業績と転出努力の報告を行い,承認 を受ける。

(2)主幹・施設長会議で承認された後,当該助手の所属研究グループの教授あるいは助教授は教授会議において当人の 研究業績と転出努力の報告を行い,承認を受ける。

2−3  再任手続

任期が満了する該当助手は3年毎に運営協議員会人事選考部会において再任の審査を受けるものとする。同部会は再任の 可否を検討し,再任が妥当と判断した際には3年間の再任を許可することが出来るものとする。

(付記) 以上の文書については第12回将来計画委員会において検討され,一部の修正(「再任資格」ではなく「6年次からの1 年毎の手続き」としたことなど)を行った上で大多数の承認を得た。ここでは修正後のものを示す。将来計画委員会では,従来行っ てきた1年毎の手続きを形骸化させることなく,分子研独自の任期制を確立すべきであるという事が確認された。そのためには,1 年毎の手続きと3年毎の再任手続の関係等について議論を煮詰める必要があり,今後,運営協議員会(特に人事選考部会)や評 議員会で議論することとなった。

(6)

5-4-2 教官停年制検討小委員会報告

平成 10 年 2 月 教官停年制検討小委員会は,以下の委員によって構成され,5 回の会合(平成 9年 10月 20日,12月 22日,12月 27日,平成 10 年 2月 5日,2月 23日)と電子メールによる意見交換を行い,停年問題に関する検討を行ってきた。12月 27日の会合では,所外の 方々の意見を伺う目的で次の 6 名の方々に出席していただいた。

岩村 秀(九大),加藤重樹(京大),北原和夫(東工大),田隅三生(埼玉大),籏野嘉彦(東工大),吉原經太郎(北陸先端 大),(浜口宏夫(東大):書面で意見表明)。

委員:渡辺芳人(委員長),岩田末廣,西 信之,塩谷光彦,鎌田雅夫,山下敬郎,岡本祐幸,田原太平

(1)はじめに

分子科学研究所は2000年に創設25年を迎えようとしている。開所以来の活発な研究活動によって,化学と物理学の境界にあ る分子科学の研究を推進するための中核としての役割を果たしてきた。その高い研究活力は,ここで育った多くの若い研究者が 全国の大学等で活躍していることに端的に表れている。言うまでもなく研究所の最大の目的は,学問上世界に誇れる成果を出す ことである。優秀な若い人材を積極的に発掘し,育て,C OEとして誇れるような環境を整えるべく様々な努力を行っている。このよ うな状況の中で,分子科学研究所では1,2代目の教授が次々と停年を迎える時期が近づき,研究所をさらに発展させるために, これからの研究所の人事のあり方と関連して,教授の停年年齢延長の可否を検討しなければならないとの認識が生まれ,停年延 長に関する検討を開始した。

(2)分子科学研究所における60 才停年制の問題点

研究所では,助教授の内部昇進を禁止するという人事方針から,必然的に教授は外部から迎えなければならない状況にある。 最近の社会情勢の変化にともなって,分子科学研究所の60歳停年制が分子科学研究所への新しい教授招へいの環境としてふ さわしいとは言えなくなってきている。

近年の社会の高齢化は,大学に限らず様々な組織で停年の延長を必然的に促しつつある。また,社会的に活躍する年齢も高 くなっているのが多くの分野における近年の傾向であり,身近な例では,60才停年制のために分子科学研究所から大学等へ転 出した諸先輩は,困難な状況の中にありながらも新しい環境の中で活躍の場を切り開いておられる。分子科学研究所における停 年は研究者としての能力・活力が高いレベルにある年齢に設定されており,こうした有能な研究者が60歳で研究を停止せざるを 得ない状況が生まれるとするならば,それは分子科学研究の発展を阻害する大きな要因となる。

(3)停年延長と研究所の活力

研究所の研究活動の面から検討すると,停年延長は両側面を持っている。既述のように,これまでに停年で研究所を去られた 教授の方々や,ここ2,3年の内に停年を迎えられる教授の方々の活躍ぶりは,研究グループの研究活動はもとより国内外の専門分 野におけるリーダーシップの面でも決して衰えてはいない。これらの教授の方々が60歳という年齢で分子科学研究所での研究活 動を停止せざるを得ないのは,研究所の損失だけでなく,国内外の学問的あるいは学会の損失であると見ることもできる。諸外国, 特に米国における「停年」の柔軟な運用と比較した場合,制度の硬直化と指摘することもできる。一方,停年の延長は,短期的に は教授交代の頻度の減少をもたらし,研究所の研究活動のマンネリ化や研究分野の固定化を引き起こす可能性があることも否 定できない。特に,すべての教授が同じように高い研究活動を60歳過ぎまで保つことができるわけではないことを直視しなければ ならない。また,停年延長は,分子科学研究所が採用している助教授の教授への昇進禁止や助手の「6年任期制」という厳しい人 事政策にそぐわないとの指摘もある。

(7)

分子科学研究所の教授定員は14人と数が限られている。研究所の比較的浅い歴史のために年齢構成に偏りが生じることが あり,一つの研究系の教授が短期間に続けて停年を迎える場合もある。他の多くの組織同様,年齢構成は組織の活力と影響力を 維持するためには決して無視できない要素である。一方,教授の採用に際しては,年齢ではなく,研究能力と研究分野こそが最 も重要な因子であることは言を待たない。教授を選出する実際の過程では,これらの要素に加えて,現実に選択できる「人材」が 重要な因子となる。結果として,比較的在任期間の短い教授を招へいする場合が出てくる。もしも,多くの国立大学と比べて3年か ら5年も停年が早いことが,分子科学研究所への赴任を躊躇させる原因であるとすれば,停年の延長によって教授として招へい することのできる人材の幅を広げることができるであろう。比較的高い年齢層の教授を採用する場合には,短い期間に確実に業 績を上げるとともに国内外の学会でリーダーシップを発揮し,研究所の活力を高めることが期待されると同時に,人事や将来計画 などの研究所の運営にその経験を生かしてもらえるという長所がある。一方,分子科学研究所では若い助教授が独立した研究 グループを形成し,新しい分野の開拓に挑んでいるが,教授にもこの役割があることは言うまでもない。従って,研究所独自の研 究を展開するためには,年齢にこだわらず,独自の研究を切り開く能力を重視した広い見地からの教授人事が望まれる。

分子科学研究所は活発な研究者を引きつけるための不断の努力を行っている。一方,先導的な大学の研究環境の整備が,相 対的に分子科学研究所の優位性を低くしている点も事実として認識する必要がある。しかしながら,充実した施設と予算のみが 研究所の評価を決めるものではない。研究所が持っている高い研究レベルを向上させようとする一層の努力が要求される。

停年の延長は,今後の分子科学研究所の発展に大きな影響を及ぼす問題であり極めて慎重に論議されるべきである。本小委 員会ではその点に留意して,検討結果を両論併記の形で報告することとした。今後,さらに全所的なコンセンサスが得られるよう に,広く論議を行うべきである。

(付記) 以上の文書については,第12回将来計画委員会において検討され,その討議の結果を受けて再度本小委員会を開 催し,修正を行った。最終的には,将来計画委員全員のレビューを経て,委員会報告とした。

参照

関連したドキュメント

金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院

大谷 和子 株式会社日本総合研究所 執行役員 垣内 秀介 東京大学大学院法学政治学研究科 教授 北澤 一樹 英知法律事務所

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP

【 大学共 同研究 】 【個人特 別研究 】 【受託 研究】 【学 外共同 研究】 【寄 付研究 】.

話題提供者: 河﨑佳子 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 話題提供者: 酒井邦嘉# 東京大学大学院 総合文化研究科 話題提供者: 武居渡 金沢大学

向井 康夫 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 牧野 渡 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 占部 城太郎 :

・ 研究室における指導をカリキュラムの核とする。特別実験及び演習 12